五稜郭を落とした男 / 秋山香乃 | 池田家の本棚

五稜郭を落とした男 / 秋山香乃



著者: 秋山 香乃
タイトル: 五稜郭を落した男

 高杉晋作ファンとしては大満足です。というか、愛されすぎです
 作者は主人公の山田市之允よりも高杉のほうが好き何じゃないか、と思うくらい。高杉の扱いが他のとは別格に感じる(気のせい?!)。
 高杉が一番生き生きしてるよ!

・初登場時、初対面の市の頭を「可愛らしいのう」となでる高杉。
・突然尋ねてきたかと思うと、無言で人の家の木に登りだす高杉。

 面白すぎ!
 あと、山県狂介(有朋)が高杉に可愛がられてる市に嫉妬(というより憎悪)するのにはちょっと笑った。
 ところで、市の京都潜伏時の変名が「豆蔵」というのは史実なんですかね。それとも創作? ググっても引っかからないんですが。どっちでもいいけど。ちなみに命名は桂さん・・・・・・。豆蔵はひどいでしょう。いくら黒豆でも。なんか某エドワード・エルリックみたい(笑)。

まじめな感想を。

 物語は吉田松陰の戦い、久坂玄瑞の戦い、高杉晋作の戦い、山田市之允の戦いという4部から成っていて、それぞれの部はそれぞれの死で終わる。

 松蔭が高杉に送った言葉、
「死して不朽の見込みあらば、いつでも死ぬべし。生きて大業の見込みあらば、いつまでも生くべし」

が上手く使われているな、という感じがする。この言葉は死に様=生き様というのを上手くあらわしている言葉で、これまでの小説では高杉晋作の生き様に使われるのしか知らなかった(高杉への言葉だから当然だけど)。でも今回、山田市之允にもこの言葉を当てはめたことで、幕末のたくさんの死が、より意味を持つように感じられるようになった。

 五稜郭を落とす=江戸時代を完全に終わらせる という意味だったのか。
 確かに多くの志士がそれぞれの役割を果たした中で、市の役割は彼らの働きの後で、幕府軍と戦って打ち破ることだったということかも。1~3部を読んでいるときは題名に「???」という感じだったけど、五稜郭を落とすところまでよんだらやっと題名に納得がいった。

 歴史小説としてもかなりいいです。よく調べてあるな、という感じ。ただ、終わりの方で鳥羽・伏見とか戦争の話が多くなるとちょっと読むのがしんどくなったのは残念。新潟の地理に暗いので、あのあたりはよくわかりませんでした。
 あと市の死因については触れず。気になって調べてみたら、生野銀山で急死としかわからないんですってね。頭蓋骨が骨折してたとか。暗殺? 事故?

 「歳三往きてまた」も買ってみよう。文芸社は文庫で出ないんだよね・・・。
 ほんとはそれより、NHKから出る高杉晋作本が早く読みたいです。それで大河の原作になったら面白いのに(本気度1%)。